2019年 中国IT業界バズワード10選
Googleが毎年発表している「検索で振り返る 2019」は、国民の関心事項を知る手がかりとなる。弊社のように海外に向けてマーケティングする際には今後の施策を立てるためにも参考にしている。昨今では、QRコード決済に代表されるように中国で普及している商習慣が日本に浸透する事例も増えているため、2020年以降の日本の社会の未来がこれら10個のキーワードに内包されていると感じている。本キーワードは、中国のQ&Aサイト(知乎)で掲載された記事を元にし作成されており、日本人向けに1個1個解説していきたい。
1.WeChatアップデート(微信更新)
既に中国では国民的アプリとなったWeChatは、日進月歩で進化を遂げている。中国人の生活の一部となったWeChatのサービスの拡充は、中国人の関心事項の1つである。いくつか例を挙げよう。
2019年、WeChatは幾度のアップデートを経て、「ビデオモーメント(TikTokのようにショートビデオをタイムラインで気軽に発信できる機能)」や「好物圏(WeChat内部のお買い物機能)」の主要な機能を追加した。
さらに、運営側のWeChat公式アカウントも大きな変化を遂げた。これまで公式アカウントの運営者の立場では、クローズドなコミュニティー内での情報拡散の限界が存在していたが、関連記事の提示(YouTubeで言う関連動画の提示)や類似アカウントの提案をユーザーに行うことで、フォロワーを獲得しやすくなった。ユーザーにとっては、自分の関心のあるWeChat公式アカウントを見つけやすくなったと言えるだろう。
また発信コンテンツのユーザー閲覧分析やリピーターなどユーザーの行動が可視化できるようになり、コンテンツ発信後のPDCAがデータを元に改善できる仕組みが整った。
2. ウェブ漫画(条漫号)
誰でも気軽に読める「ウェブ漫画の広告」がWeChatやWeiboなど中国SNS上で流行っている。「局部气候调查局、有趣青年、GQ实验室、新世相X研究所、不会画出版社、长图汽车站、黄一刀有毒、网易哒哒、K董、匡北北、大人别出声」をはじめとするWeChatアカウントは大きな人気を得ている。
例えば、エリート層向け雑誌《智族CQ》の運営側が開設した公式アカウント「GQ实验室」は都市圏に住む若者が関心を持ちそうな「仕事」・「日常生活」・「人間関係」をテーマにして、彼らに支持されるようにウェブ漫画を作成し、ユーザーとの関連性が高いコンテンツ厳選してプロモーションを実施している。
「GQ实验室」は、閲覧数が10万以上のウェブ漫画広告を280個を制作したことが、業界ではかなりの話題になった。そのほかにも、「局部气候调查局」は主に科学知識に関する情報を、「新世相X研究所」は首都圏における話題を軸にウェブ漫画を作っている。プロモーションを行いたい事業主は消費者の属性に合ったアカウントを選択し、ウェブ漫画の企画から発信まで行う流れが一般的だ。しかし、ユーザーのコンテンツに求めるレベルも徐々に上がってきているため、どのように注目させるかもインフルエンサーたちの課題となっている。
3. アカウント規制(监管封号)
WeChat広告やライブ動画配信の広告が普及する一方で、中国政府のコンテンツに対する監督・規制も厳しくなっている。公式アカウントを運営する際には、規制に触れやすいセンシティブなキーワード・文言・画像・ビデオが含まれていないかチェックする必要がある。
4. ライブコマース
中国では、ライブ動画配信で商品を紹介して、視聴者限定の時限クーポンの提供やインフルエンサーによる演出によりユーザーを購買へ誘導する「ライブ配信コマース」が主なプロモーションとなっている。口紅やファンデーションのようなコスメからティッシュ箱・カップラーメンのような生活用品まで、インフルエンサーは巨大ECサイト「TaoBao」ECアプリ「拼多多」RED(小红书)の中でユーザーに紹介している。
5.Vlog
Vlogは「Video Blog」つまりビデオ形式のブログを指す。近頃では、10代~30代の若者たちはブログではなく、Vlogで自分のライフスタイルをオンラインで発信するようになり、気軽に発信できるツールとしてとして人気を高めている。TikTok・Weibo・テンセントビデオも、その流れを汲み取るようにVlogの利用促進に向けて様々な工夫をしている。
6.KOC
中国のインフルエンサーといえば、KOL(Key Opinion Leader)。芸能人や歌手といった多くのフォロワー数を持ち、強力な影響力を持っているKOLに対しKOCは(Key Opinion Consumer)は、フォロワー数は少なくてもいわゆるヤラセ投稿がなく、誠実な商品レビューや中立的な紹介が出来るオピニオンリーダーの事を指している。中国人消費者も自作自演の広告には嫌気が差しており、利害関係なく本当に声が知りたいという欲求が高まっている背景の中で、セレブではなく消費者目線で情報発信できるKOCを活用したプロモーションが浸透してきている。
7. 独自トラフィック(私域流量)
強いて言えばクローズドな世界における情報発信のことを指す。例えば、友人申請・承諾を経てつながっていたフェイスブックのウォールにおけるプロモーション活動と言えば良いだろうか。かなり親しい人間関係では、紹介、口コミがより効果的に作用しいわゆる成約率も上がる。
一方、オープンな世界、TwitterやInstagramのように相手の承認を経ずに一方的に購読できるチャネルは公的流量と呼ばれている。
KOL全盛期は、情報をいかに拡散するかが広告の利用価値だったと言えるが、企業はより実利に目を向け、量よりも質へと揺り戻しが来ているのかもしれない。
8 農村市場(下沉市场)
北京や上海、広州などの都市は既に様々なITサービスが浸透している一方で、国内内陸部の農村地帯は成長の余地がまだまだ残されている。中国語では「下沉市场」と呼ばれ、農村地域のユーザーに合った「快手、拼多多、趣头条」に代表される低価格と使いやすさを売りにした、都市部の論理とは異なった動きをしたプラットフォームの普及が始まっている。
9 ショートビデオ激戦(短视频:平台混战)
TikTokや快手をはじめとするショートビデオSNSは成長が著しく、国内の競合も激化している。今後、5Gネットワークの到来とともに、ショートビデオに通じたプロモーションやインフルエンサーの活用はさらに注目されるに違いない。
10.SNSサービス大混戦(社交大战)
WeChatとWeiboなど中国最大手SNSのお株を奪おうと、今でも様々なアプリが手を変え品を変えユーザー獲得に乗り出している。例えば、音声通話を重視した「回音」(開発元:テンセント)や化粧に特化した盛りアプリ「轻颜相机」など挙げればキリがない。既にサービスを終了している会社もあり、しばらくは混戦が続きそうだ。
既に国内の人口が14億人に達した中国では、ITサービスのPDCAサイクルが高速回転され、進化の速度が速い。TikTokのように中国発のアプリが世界を席巻し始めた事例もあり、今後も中国の動向に注視していきたい。
参考:https://zhuanlan.zhihu.com/p/98077071